みなさんこんにちは、革芸人です。
突然ですが「革財布」と聞いて何の動物の革を思い浮かべますか?
やはり牛革や鹿革、馬革あたりでしょうか。
世の中に出回っている革製品の大半は牛革が占めています。
今回は、財布に使われている革の中からワニ革であるクロコダイルについてご紹介したいと思います。
クロコダイルとは!
- クロコダイルとは?
- クロコダイルは何ワニ?
- 肚ワニと背ワニとは?
- 他の革との違いは?
- スモールクロコダイルって何?
- 天然と養殖どっち?
- 温度でうまれる性別を決められる!?
- 「皮」と「革」の違いって何?
- 「皮」から「革」にするには?
- 革にどうやって色をつけるの?
- 色を染めて終りじゃない!?
- ワニは縁起が良い生き物らしい?
- フルオーダーとセミオーダー
聞いたことはあるけれど詳しくは知らない。
この記事を読んでクロコダイルの財布を自分も使ってみたい、持ってみたい、そう思っていただけると嬉しいです!!!!
Q1.クロコダイルとは?
ワニの呼び名のひとつ。クロコダイル科。
クロコダイル科、アリゲーター科、カイマン科の3科に分かれます。
クロコダイル科の中には4つの種類がございます。
(1)スモールクロコダイル
(2)ラージクロコダイル
(3)ナイルクロコダイル
(4)シャムクロコダイル
クロコダイルと呼ばれるものは上記の4種類のみです。
同じワニもでもカイマンやアリゲーターは「クロコダイル革」と表示はできません。
カイマンは「カイマン」または「バビラス」と表示しなければならないのです。
カイマンやアリゲーターはクロコダイルとは全くの別物なので注意が必要です。
カイマンの特徴
クロコダイルと違い全体に骨質部が多く革の表面にクレーターがあり凸凹していて硬い革です。
また細かいシワ模様が見られます。
お財布に使う素材としては、柔らかくしっとりとした質感のクロコダイルがおすすめです。
・クロコダイル(ワニ)
・ダイヤモンドパイソン(ヘビ)
・リザード(トカゲ)
・エレファント(象)などは、
牛や鹿などとは違い日本人にとって身近ではない生き物というで意味で、エキゾチックレザーとも呼ばれています。
Q2.クロコダイルは何ワニ?
クロコダイルとは商業名です。
それでは一般和名はなんと呼ばれているのでしょうか。
(1)スモールクロコダイル = イリエワニ(ポロサス)
(2)ラージクロコダイル = ニューギニアワニ
(3)ナイルクロコダイル = ナイルワニ
(4)シャムクロコダイル = シャムワニ
紹介致しました4種類のクロコダイルの中でも
イリエワニであるスモールクロコダイルは最上級です。
Q3.肚ワニと背ワニとは?
肚ワニ
ワニの背中を割き、腹(肚)部の鱗を使用した革です。
近年では加工のしやすさや見た目の美しさから、肚ワニを使用することが主流となっています。
ヨーロッパの一部のブランドメーカーでは背ワニをメインに製造しているところもあるようです。
革芸人で製作しているクロコダイルの長財布などは、主に肚ワニを使用しています。
背ワニ
ワニの肚(腹)の部分を割き、頸部から背中の凹凸を使用した革です。
ゴツゴツした質感が特徴でワイルドな印象です。
この革を見ていると「生きた恐竜」と呼ばれているのが納得できるような気がします。
Q4.ほかの革との違いは?
一番の特徴は独特の鱗(うろこ)模様です。
この鱗模様に世界中の人々を魅了しています。
肚の中心には竹腑と呼ばれる長方形の鱗。
両サイドにつれて丸みを帯びた玉腑と呼ばれる丸い鱗が見られます。
これらの鱗模様は迫力に加えて高級感に溢れています。
価格は人気の高さや養殖のコストなどの理由から、牛革などと比較すると10~40倍ほど高くなります。
希少価値が高くクロコダイルは絶滅のおそれがるためワシントン条約で厳しく制限もされています。
輸入や輸出に関してはもちろん、天然のクロコダイルを捕獲することもしっかりと管理されています。
特にラージクロコダイルは養殖ではなく天然のワニを捕獲し現地の住民の方々の生活の糧となっておりますので、乱獲などが起こらないよう規制されています。
これらのことをしっかりと理解して、取引にも十分注意する必要があります。
故にクロコダイルは「革の王様」とも呼ばれています。
1972年 貴重な野生動植物を保護し絶滅から護ろうという案 野生動物保護意識が高まる
(1年後)
1973年3月 アメリカのワシントンに81カ国の代表が集まり
「絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」=通称:ワシントン条約が定められました。
現在では約170カ国が加盟しています。
(7年後)
1980年3月 日本が批准(条約に同意)同年11月に正式に加盟
一目見ただけでは違いを認識することは難しいのですが、竹腑に少し違いが見られます。
Q1のよくある間違いで述べたクロコダイルとカイマンの革を比較した画像です。
カイマンの革にはクロコダイルにはない細かいシワやクレーターが確認できますでしょうか。
Q5.スモールクロコダイルって何?
最初はこのスモールというのはワニの大きさを表していると私は勝手に思っていました。
そういう認識をされている方も多いんではないでしょうか。
でも実は、スモールはワニの種類のことを言っており、他のクロコダイルよりも比較的鱗の大きさが小さいことでスモールという名前がつけられています。
スモールの反対でラージクロコも存在します。
スモールクロコダイル 別名:ポロサス
美しい配列だからこそクロコダイルの長財布だけではなく
バッグなどの大きい製品でも美しさなどが楽しめます。
クロコダイルの中でも最も、鱗模様が細かくて綺麗であることが大きな理由とされています。
Q6.天然と養殖どっち?
現在使われているワニ革の80%以上が養殖されたものです。
ワニは生まれてから材料に適した横幅30cmになるまで養殖で2年〜3年、
大きめのトートバッグ用なら、10年以上の歳月がかかります。
野生だとこの倍の年月がかかります。
ラージクロコダイルは9割が天然であり、地元の方々の生活の糧となっております。
Q7.温度でうまれる性別を決められる!?
ワニの中でもアリーゲーター科は卵の孵化する温度で性別を分けられるそうです!
産卵してからの15日目から25日の間の巣の温度が32.5℃〜33℃の範囲だとほとんど雄がうまれるそうです!!!!!!
不思議ですね。
温度調節をして成長の早い雄をたくさんうまれるようにしているそうです。
Q8.「皮」と「革」の違いって何?
「皮」=スキン・・・動物などから剥ぎ取って何も手を加えていないもの
「革」=レザー・・・皮に手を加え財布などの製品として使えるように加工したもの
皮のままでは長財布やバッグなどの革製品には出来ないので加工を施します。
革になるまでの所要日数は約50〜60日です。
これをかわのなめし(鞣し)といいます。
皆さんはクロコダイルなど様々な爬虫類の皮の輸入方法をご存知でしょうか。
どのような状態で日本に輸入されているのかご紹介致します!
クロコダイル
塩漬けにされた原皮が飛行機で輸入されます。
ヘビ・トカゲなど
スルメのように自然乾燥された状態で同じく飛行機で輸入されます。
このように塩漬けや乾燥して輸入されるのは腐るのを防ぐために行われます。
なぜクロコダイルは塩漬けなのか。
ヘビやトカゲのように一度乾燥させたものを加工するとどうしても皮の質は落ちてしまいます。
クロコダイルは高級品だからこそ塩漬けで輸入され出来る限り良い状態で革に加工されます。
Q9.「皮」から「革」にするには?
一枚の皮が革になるまでさまざまな処理が行われます。
所要日数も90日以上かかります。全ての工程を日本で行っています。
汚れを取ったり水分を補い生皮に戻す
↓
フレッシング
厚みを揃えたり不要物を取り除く
↓
石灰漬
鱗を取り除く
↓
ピックリング
鞣し(なめし)で鞣し剤がうまく浸透するように酸性度の調整
↓
※クロム鞣し
金属とタンニンで鞣します
↓
シェービング
作るものに合わせた厚さに均一にする
↓
漂白
模様を消したり色を付けるために真っ白にします
↓
再なめし
革の用途に応じた特性を与える
↓
乾燥
板に釘でピーンと張ります。
簡単に見えて実は難しい技術です。
うまく張れないと乾いたときヨレヨレになってしまいます。
金属(クロム)鞣し・・・ 耐熱温度を高めるため
タンニン鞣し・・・ 繊維をキュッと締めるため
例えば鞣した革と原皮をお湯に入れて少し時間が経つと原皮はシワシワになり小さくなります。
財布などの革製品にするためには耐熱温度などを高めるために鞣し工程は必須です。
Q10.革にどうやって色をつけるの?
革は色がつく前は漂白されて真っ白になります。
染色方法は2種類!
染料 | >>染料を革の繊維に着色する染色方法<< ・革の経年変化が起きやすい。 ・生前についた傷やシワが残りやすい。 ・質感や風合いが残るので透明感のある仕上がり。 ・顔料による染色方法に比べ傷がつきやすく水に弱い。 傷が目立つ革は使用できないため傷が少ない厳選された上質な革が使用されます。 |
顔料 | >>革の表面を覆うように色を塗る染色方法<< ・革の表面にペンキを塗る様に色付けするので経年変化が分かりにくい。 ・傷が付きにくいので購入時の状態を保てる。 ・統一感のある綺麗な仕上がり。 ・生きている際に付いた傷などが見えづらい。 ・染料による染色方法に比べ傷がつきにくく水にも強い。 |
2種類の染色方法どちらにも良いところとそうでないところがございます。
お客様が革にどのようなことをお求めになられているかによってお好みは異なると思います。
革芸人では革の質感を感じていただけるように、そして経年変化を楽しんでいただけるように、染料仕上げの革をメインに使用しています。
手染めのグラデーションのお色もございます。
最近はグラデーションのお財布もご好評いただいております。
商品詳細HP>>
【ナイルクロコダイル】 定番の名刺入れ cdc002
【クロコダイル】 L字ファスナー ハーフウオレット hfw003
【ナイルクロコダイル】ラウンドファスナー 長財布 センターどり lgw008
Q11.色を染めて終りじゃない!?
色を染めた後の革に仕上げをします。
色艶が魅力のシャイニング仕上げ
落ち着いた雰囲気のマット仕上げの2種類!
特徴
・輝きと色艶が魅力的な仕上がりです。
・ひとつひとつの鱗が輝いていることから「革の宝石」と呼ばれています。
・オレンジやレッドなど明るい色の発色が良くなります。
鞣し方
・シャイニング仕上げはグレージング仕上げとも呼ばれています。
・表面にタンパク質バインダーと呼ばれる仕上げ剤を塗り、メノウの石で磨き上げます。
・一番の魅力は透明感のあるツヤにあります。昔からあるクロコダイルのハンドバッグはほとんどがこのシャイニング仕上げです。
お手入れ方法
色艶が魅力のシャイニングですがちょっとしたことで傷が付きやすく、紫外線などの影響も受けやすいという欠点がございます。
日常の使用の際には乱暴な取り扱いは避けるのはもちろんですが、お手入れの際にも気を付ける必要があります。
【日常のお手入れ】
・柔らかい布を使い軽く拭くようにします。→特に汚れや水濡れの際には速やかに拭き取ってください。
・定期的に専用のケア用品を使ってのメンテナンスを行うことも大切です。→ナチュラルなオイルを数か月に1度補給してあげると良いです。
・雨などで濡れた場合はすぐに乾いた布などで水分を拭き取る。
・保管時には汚れなどを落とした上で、高温多湿の場所や風通しの悪い場所を避けて保管します。
・長時間直射日光や照明に当てないようにするといった点にも気を付けるようにして下さい。
ツヤと輝きを長く保つことが出来るかどうかは、日常の取り扱い方も重要でございます。
クロコダイルは非常にデリケートな素材です。
取り扱いやお手入れ、保管方法には十分に気を付けることが大事です。
経年変化
・少しずつツヤ感が失われていき落ち着いた質感に変化していきます。
※少しずつツヤは減ってしまいますが「ツヤ出し」仕上げ材を塗ってツヤを復活させる事も可能です。
特徴
・光沢を抑えた落ち着いた雰囲気が魅力です。
・新品のときはツヤは抑えられていますが使う度ツヤが増します。
・シャイニングと異なり柔らかい質感です。
・傷もシャイニングと比べると付きにくいため長く持つ際にはマット仕上げがおすすめです。
・経年変化、エイジングがお楽しみいただけます。
鞣し方
・羽布(バフ)掛けによって磨き上げられます。
・柔らかい羽布で磨くことでピカピカではなく落ち着いた光沢感がうまれます。
・磨き時間によって仕上がりの光沢感は微妙に異なります。
お手入れ方法
日常のお手入れとしてはシャイニング同様から拭きが基本となります。
【日常のお手入れ】
・柔らかい布で軽く拭いてください。
・直射日光や湿気、水濡れが大敵です。
万が一濡れてしまった場合はすぐに柔らかい布などで拭き取ってください。
経年変化
・使っているうちに光沢感が増す経年変化が楽しめます。
使っていただくお客様に合わせて革が変化していきますので世界で一つのお品物になります。
Q12.ワニは縁起が良い生き物らしい?
ワニといえば大きな口がかっこいいですよね。
あの大きな口で加えたものは絶対離さないという事から財布に入ったお金は出て
行かないように守ってくれると言われています!
また鱗模様がだんだん増えていくように見えることから、お金も増えていくとも言われているそうです。
Q13.フルオーダーとセミオーダー
革芸人ではオーダーメイドを承り中です。
<フルオーダー>
弊社に無いデザイン、お客様が考えたデザインで製作した場合。
クロコダイルの革の使用する量などによってお値段が変わってまいりますのでお気軽にお問い合わせくださいませ。
<セミオーダー>
弊社にあるデザインで販売されていない革の色のオーダーなど。
※製作するお財布の大きさなどによってお値段も前後いたします。ご希望のデザインなどがお決まりでしたらお見積りをご案内することも可能ですのでお気軽にお問い合わせください。
いかがでしたでしょうか?
クロコダイル独自の迫力ある鱗はひとつひとつが異なり、全く同じものは存在しません。
同じ商品でも模様が全て異なるため世界にひとつだけの革商品になります。
とっても素敵ですね。
また、革の特有の経年変化がクロコダイルの革製品でも楽しむことができます。
大きい革製品でも小さい革製品でも使ってくださる方に馴染むよう変化をしていくのです。
普通なら使った途端から中古になり価値は下がりますが、革製品は逆に使ったその瞬間から価値は上がっていきます。
クロコダイルの財布をもっと見たい、使ってみたい、持ってみたいと思っていただけたら
とっても嬉しいです。
革芸人のホームページではたくさんのクロコダイル革製品を取り揃えています。
ぜひ、覗いてみてくださいね!